蜜月まで何マイル?

    “らしくもないこと”


さすがは“グランドライン”の奥座敷、
来る者も限られる“新世界”という過酷な海だからか、
それとも自分たちが微妙に
ツキに見放されたか、若しくは恵まれまくりなだけなのか。
他の海域にもまして 果てしなく広がる大海原にて、
試練なんだか冒険なんだか、
間違いなくS級だろう途轍もない騒動に巻き込まれるのが、
もはやセオリーでデフォルトな、
今現在の海を色んな意味から絶賛お騒がせ中の、
麦わらの一味だったりするのだが。

 「どんな煽り文句だ、そりゃ。」

お話の枕、ツカミの部分へ
さっそくにも噛みついて下さった
金髪痩躯、渦巻き眉毛の凄腕シェフ様。
彼らの愛すサウザンドサニー号のキッチンにて、
小さな子供がすっぽり収まりそうなほど
そりゃあ大きな銀のボウルを小脇に抱え、
ワイシャツの腕まくりも勇ましく、
だがだが手際は繊細に
泡立て器をカシャカシャ回して、
只今 絶品生クリームケーキへのデコレーションを鋭意作成中。
そのすぐ傍らでは、
彼専用に一味の船大工さんが作って差し上げた、
丸椅子型の踏み台にちょこりと登ったトナカイ船医さんが、
こちらは みかん大好き航海士さんが縫って下さった
割烹着タイプのエプロン姿にて、
大理石の作業台へと広げられたクッキー生地を相手に、

 「たあ〜〜〜っ、とあ〜〜〜〜っ!」

いかにも真摯な表情、掛け声も勇ましく“えいえい”と
モグラ叩きのような作業にいそしんでおいでだったりし。
小さな手にはステンレス製の、様々な型抜きが握られていて、
星形、ハート型、アヒルさんにクマさんに、
UFOみたいなのは麦わら帽子か、
結構ユニークな品揃えの数々が予定されているらしく、

 「抜いたのは
  そっちに用意したオーブンの天板へ並べてくんだぞ?」

 「おおー!」

薬の調合と似ているものか、それとも単なる好奇心、
サンジのお料理の手際の鮮やかさと
そこから生み出される数々の可愛らしいスィーツの
宝石みたいな綺羅らかさに魅了されたか。
トナカイ船医のチョッパーさん、
特別な日の支度へは、
助手の役を進んでやりたがる傾向にあったりし。

 「サンジって、こんなに器用なのに
  何でまた日頃はちょこっと乱暴なんだ?」

卵白と砂糖をようようホイップし、
クッキングシートへ口金で絞り出し、
オープンでカリッカリに焼いた “メレンゲ”が、
温める課程のついで、
まずはのお試しとして焼かれていたらしく。
オーブンから取り出されたそれ
味見用だからか小さめのスワンの形になってたの、
ほれと差し出されたチョッパーせんせえ。
うひゃあ〜vvとつぶらな瞳をうるるんと潤ませつつ、
素直に受け取り、カリサクと軽い食感を堪能してから、
疑問に思ってたらしいこと、素直に口にしたところ、

「そぉっかぁ?」

乱暴と言われたのが意外だったか、
それとも
そういうギャップこそ味わいじゃねぇかと、
それこそ実は自覚あっての仕儀ゆえのこと。
でもでも今はお茶らけて、意外な指摘だという素振りをし、
わざとらしいほど大きめに目を見張り、
間延びさせた言いようでお返事を返す、天才シェフ殿だったりして。
そんなややこしい“大人の”婉曲なんてのに、こちらはまだ通じてないせいだろう、

「ホントだぞ、俺、判るんだ。」

小さな蹄の先で器用に摘んだメレンゲ菓子を、
パリリサクサクと堪能してからの、天真爛漫なドクターさんの言うことにゃ、

「だってサンジ、よく見ると手にいっぱい切り傷あるけど、
 それは全部包丁で切った古傷ばっかりで。」

わざわざ身を乗り出して、
あらためてのじいっと
こちらの手元を見やってくるチョッパーの素直さに、
やや狡猾を気取って“大人の煙幕”を張ってしまった身を
ちょっぴり後ろめたく感じてしまう。だって、その先の言いようも
何とはなく想定できたサンジだったからで。

「喧嘩も強いけど、そういうので出来た傷は一つもないんだろ?
 そんくらい料理が一番大事なのに、
 だったらいっそ、乱闘とか避けりゃあいいのに、
 それも出来ない、黙ってられないから、
 足技が達者になっただなんて。」

矛盾してるとか、いっそワガママだよなとか、
いかにも生真面目で真っ直ぐなお子ちゃまの言いようが
降ってくるんだろうよなと先読みし、

 “…やれやれ。”

そんな可愛らしい憤慨を見越し、苦笑混じりに覚悟をしておれば、

 「それって、
  背中の傷は剣士の恥とかいって
  無茶し放題のゾロと一緒だぞ。」

強いのは重々判ってるけど、
それでも心配させるなんてあんまりじゃないかと。
チョッパーにしてみりゃ、ここぞとばかりのお説教のつもりらしかったのだが、

 「…ちょっと待った。」

なんでそこであのむさ苦しいのが出て来るわけ?と。
ちょっとどころじゃなく、がっくしと
配膳台の縁より下までというほどに
大きくずっこけてしまった
サンジさんだったりしたのでありまして。(苦笑)



  そしてそして



こちら、春島海域のホカホカと心地のいいお日和が
ふんだんにそそがれている、
芝生も青々と気持ちのいい甲板では、
クルーの皆様が全くの全然こそこそしないで
今宵の宴の仕込みに忙しそうなのを尻目に、
そういう仕儀にはてんで役立たずな
戦闘&冒険担当のツートップが、
日向の猫よろしく ごろごろして過ごしていたりもし。
キッチンにて引き合いに出されていた剣豪さんも、
背中以外のあれこれのなか、
特に悪目立ちしている胸元の傷を
着流し風の普段着の懐ろから覗かせておいでだが、

「……んん? 何だ、ゾロ?」

自分のそれは意に介さぬくせに、
こちらの立て膝を勝手に背凭れ扱いにして
凭れ掛かったり、頬っぺをゴロゴロ懐かせたり
遊ぼう遊ぼう構っておくれ態勢の子犬を思わすじゃれようを
遺憾なく発揮中の麦わらの船長の、
やはり大きく開いた胸元へ。
ちろりと視線が向いていたのみならず、
今更一体何が気になるものなのか、
小首を傾げるルフィの鎖骨の合わせにとんと人差し指の先を置き、
そのまますうっと下ろしたりしたものだから。

「うひゃあ☆」
「妙な声出してんじゃねぇよ。」
「誰のせいだ、誰の#」

 ……なにやってんだか。

「何だよ。いきなり。」

くすぐりっこなら負けねぇぞと、
にんまり笑って
ちょっとほど身を起こした船長さん。
そのまま、まだまだ子供っぽい作りの両手を持ち上げ、
猛禽類の足のよに、指の一本一本を立てつつ、鉤に曲げて構えると、
行くぞと良いノリをして見せたものの、

「お前のそれって、あの陰気な外科医野郎が手当てしたっつってたよな。」
「? ああ、そうだぞ♪」

唐突に、しかも今更な話ゆえ、
何を言い出したのかがピンと来なかったらしい船長が、
そんな反応の遅ささえ気に入らないか、
悪かったな言い回しがまずくてと
しかめっ面を呈すゾロと向かい合ったまま、
やっぱり半分くらいはまだ相手の意図が判らないまま、
それでも“そーだぞvv”と応じたところが、

 「悪魔の実も食ってての、結構凄腕らしいってのに、
  それでもこんな跡が残ったのかよ。」

 「……おや。」

喧嘩や戦闘で出来た代物、
ましてや彼らの場合、逃げなかった証でもあるそれを、
お互い様というレベルで重々判っているはずだろう剣豪が、
だって言うのに
納得いきませんと言わんばかりな声で言う。
何だなんだと、さすがに不整合を感じたか、
ルフィがキョトントしてみせれば、

「お前が何か向こう見ずを張ったことをどうこう言うんじゃねぇんだが。」

今度は自分の口下手へだろう、舌打ちしたいような顔となり、

「だから、その、何だ。」

「何だよ、はっきりしねぇなぁ。」

傷もんになったのが気になんのかよと、
ルフィが口元尖らせるに至り、
そこはさすがに大きく見当違いだったからだろう、
大きな作りの手のひらでパフリと口許覆い隠してやってから、

「だから、だ。
 お前、そうやって前をはだけてるだろうがよっ。」
「? おお。」

それがどうしたよと、ますますと意味が分かり兼ねるか、
ゴムの限界までの挑戦でもするように、
ぐいんと大きく首を傾げて見せれば、

「だから…そういう目立つもんがあったりすれば、
 誰にせよ、こっそりとでも
 ついつい目が行くというか……。」

そんな目印残されやがって、
名医が聞いて呆れると、そういう風に持っていきたかったらしいのが、

 「口下手にさりげなくなんて小技が、出来るワケないわよねぇ♪」

彼らには背中を向けたまま、
カラフルなクレープ紙で造花を量産中だったナミが、
ふふんと何故だか偉そうに言い放てば、

「フフ…そうねvv」

やはりお花作りに励んでいたロビンもまた、
同じ甲板の端っこの会話が聞こえていたればこその苦笑を、
甘く噛みしめつつのお返事を返しており。

「…じゃあ何か? ゾロとしては、自分はよくても
  俺が勲章遺すのは気にいらねぇのかよ。」

「はあ? そんなことは言ってねぇだろうが。」

冗談抜きに死ぬほどの大怪我を負っておきながら、
そのことで仲間たちに胸が潰れるほどの心配も
それぞれさせておきながら、

「…目印扱いかよ、おい。」

海の勇者にはなりたいが、
向こう見ずになりたいワケではないらしいウソップが、
見るからにしょっぱそうな顔をして。
そんな彼と向かい合い、
ポップコーンシャワー製造機を制作中のフランキーが
カッカッカッと豪気に笑う。
そぉんなお仲間たちを

「いやいや怖いもの知らず、いいですねぇ。」

なんて、自分は好々爺の境地に落ち着いて、
他人事みたいに感慨深くなっているブルックといい、
やはりやはり相変わらずな人たちであるようです。


あ、そういや忘れてましたね。


 
HAPPY BIRTHDAY! TO LUFFY! (おいおい)

  〜Fine〜  15.05.17.


 *コロシアム組の豪傑たちを
  片っ端から変な名前で呼んでた剣豪だったそうですが、
  でも…そういやゾロさんたら、
  ローのことは、ちゃんとローと呼んでましたよね。
  王宮に向かう道中の初っぱな、
  ピーカからの拳に襲われ吹っ飛ばされた折に。
  ってことは、名前の覚えが悪いわけでもなさそうで。
  (それはむしろルフィのほう。)
  それにつけても、なんでまた
  サンジさんだけ
  なかなかサンジと呼ばないままだったんでしょうかね?
  グル眉とかアホコックとか
  そんな呼び方ばっかしてたでしょ?
  そういや、ロビンさんもなかなか名前で呼んでなかったけど、
  それは、本人がいないところでは話題にしなかったからだろなと
  思っております。
  陰口が嫌いだからと言うより、
  面倒だったから、とか?(おいおい)
  なので、面と向かった時にどう呼ぶか、
  虫が好かない相手なら、お前とか“おい”で済ませるもんだから、
  なかなか名前で呼ばないとなっちゃってたんでしょうね。

ご感想はこちら*めるふぉvv

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